講師紹介
二村ヒトシさん

学校長の推薦コメント

絶版になっていた橋本治さんの『恋愛論』が、
2014年に「文庫ぎんが堂」から
「完全版」として復刊されました。

その復刊にも関与した二村ヒトシさんが書いた
『恋愛論』の解説に脱帽しました。

これほど見事な解説は
なかなか書けるものではありません。

尋常ならざる没入があって、
初めて書けるものだと思います。

二村さんは、いまこそ再び広く読まれるべき
80年代の橋本さんの著作として、
『恋愛論』とあと2冊、
『青空人生相談所』、
糸井さんとの共著『悔いあらためて』
を挙げています。

橋本さんの膨大な著作を前に、
そう言い切れる人はなかなかいません。

そのくらいこれらの本が、二村さんに
与えた影響が大きかったということでしょう。

以前から、同じ文庫ぎんが堂から出ている
二村さんの著書『すべてはモテるためである』と
『なぜあなたは「愛してくれない人」を
好きになるのか』を読んだ知人が
語ってくれる感想を聞いていると、
うっすら橋本治さんの匂いを感じました。

ご本人にお会いしたら、
思っていた以上の橋本さんへの傾倒ぶりで
講義がますます楽しみになっています。

二村さんは『恋愛論』の解説で、
講演の途中で泣く38歳の橋本治さんと、
少年時代、ドッジボールの好敵手となった
女の子とのエピソードを
実に鮮やかに切り取っています。

私も好きだと思った個所なので、
さらに共感は深まりました。

『恋愛論』はいろいろな読み方ができる作品です。

なので、語っていただくのは
二村流の読み解きになるのでしょうが、
すごく深いところで二村さんと交錯する
橋本さんの「なにか」が
きっと見えてくると期待しています。

講師のことば

大学生のころに、
橋本治さんの『恋愛論』を読みました。

そのときはとにかく「おもしろい」と思って読んでいて
よくわかってなかったんだけれど、30年ほどたって
自分が恋愛や性について書くようになってみると、
おおもとのところで影響を受けまくっている、
ていうか僕の仕事は橋本さんの考えや思いを
なんとかなぞろうとしているだけなんだって
改めて感じます。

傷つくことが怖くて恋愛に踏み出せなかったり、
恋愛に悩む人に、この本を薦めたいなと思って、
いくつかの形で文庫になっていたものを集めて
「完全版」として2014年に復刊されたとき
巻末の解説を書かせていただきました。

橋本さんは「恋愛に必要なのは陶酔能力である」
と書いています。陶酔というと、
ただ好きになって没入することのようですが、
橋本さんの思想は一筋縄ではいきません。

恋愛とはつまるところ、
相手との関係において自分の感情と出会うこと、
自分の中にドラマを発見することなんだと
橋本さんは述べていると僕は思う。

言い換えると、恋愛とは
「幸せになるために、しなければならないこと」ではなくて、
「自分とめぐりあうために、
他人を好きになってしまうこと」である。

このへんを橋本さんは理屈っぽく攻めてくるんだけれど、
理屈だけじゃない。

理屈とドラマ、論理と感情の橋渡しができるのは、
橋本さんが「男と女のハイブリッド」だから。

男にも女にも媚びない「正統派」だから。

今の目でこの本を読み直すと、
橋本さんが「男でも女でもあった」つまり
「人間であった」から感じたことを描いたのだというのが、
よくわかります。

橋本さんの語りのなかには、
粋(いき)があり、やさしさといじわる、
きびしさと愛情、それらがぜんぶ同時に存在している。

すごい知性です。

しびれるのは、そういう部分。

『恋愛論』は、書かれた当時以上に、
いまこそもっと読まれるべき本だと心から思います。

二村ヒトシにむらひとし

アダルトビデオ監督。慶應義塾大学在学中に劇団を主宰し、アダルトビデオ男優を経て監督に。『すべてはモテるためである』『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』『どうすれば愛しあえるの 幸せな性愛のヒント』(宮台真司氏との共著)など著書共著多数。