ほぼ日の学校

Hayano歌舞伎ゼミについて

フェロー早野龍五の弁

学校長の推薦コメント

物理学者以外の早野さんの横顔を知ったのは、
少年バイオリニスト「早野龍五くん」の
話を聞いたときでした。彼が音楽才能教育
「スズキ・メソード」の選ばれし10人の子供=
「テン・チルドレン」として渡米し、
日本のバイオリン教育の成果を披露し、
アメリカ人を刮目させたという話を
「スズキ・メソード」の歴史とともに知ったのです。

たまさか同時期に早野と私は、
ほぼ日にかかわることになり、
そのバイオリン少年が歌舞伎の大変なファンに
成長していることを知ってまた驚きました。

彼が東大で理系の学生を対象に開いた
伝説の歌舞伎ゼミのことを聞き、
ほぼ日の学校でも歌舞伎ゼミをやってもらうことに
何のためらいもないばかりか、
ぜひにと両手をあげて賛成した次第です。

歌舞伎ゼミについて

1986年、私は東京大学で
「理系学生のための歌舞伎講座」というゼミを始めました。

理学部の事務方は「物理の先生がそんな授業をするのはダメ」と
反対しましたが、当時の理学部長
(後に東大総長・文部科学大臣になる有馬朗人先生)は、
「ぼくも時間があったら俳句のゼミをやりたい。

早野君にやらせなさい」と言ってくださいました。

この一言で、Hayano歌舞伎ゼミは
実現することになったのです。

この年は国立劇場で仮名手本忠臣蔵が3ヶ月かけて
通し上演され、Hayano歌舞伎ゼミは
駒場の教室で授業を月に2、3回行い、
国立劇場に通うというスタイルで始まりました。

定員の25名が一杯になる人気ゼミでしたが、
私が研究のために海外出張することが多くなり、
3年ほどで中止を余儀なくされました。

いつか再開したいと思い続けながら、
叶うことなく定年を迎え、とても心残りでした。

その歌舞伎ゼミを、「ほぼ日の学校」で再開します。

99人の受講生のみなさんとどうやって一緒に
歌舞伎を観にいけばいいのか、
演目と講義をどうリンクさせればいいのか、
悩みは尽きることがありませんでしたが、
魅力的な講師のみなさんと相談を重ねるうち、
やってみようという気持ちになりました。

私が愛してやまない歌舞伎には
400年以上の歴史があります。

身銭を切って観に行くお客さんが途絶えない限り、
この先何百年もつづきます。

少しでもそんなお客さんが増えるように、
歌舞伎の魅力をお伝えしたいと思います。

歌舞伎は「少しの勉強」をした方が楽しめます。

でも、蘊蓄(うんちく)を語る講座にはしません。

すでにひいきの役者さんがいるという「上級者」は
どうぞ、どんどん劇場に足を運んで、
どんどん歌舞伎見物を楽しんでください。

ほぼ日の学校に来ていただきたいのは、
歌舞伎に興味があるけど、
なんとなく敷居が高いと思っている人。

何から観ればいいかわからない人。

歌舞伎が何だかさっぱりわからないけれど、
好奇心がある人。「傾(かぶ)いて」みたい人です。

ご参加をお待ち申し上げます。

早野龍五はやのりゅうご

1952年、岐阜県生まれ。物理学者。

東京大学大学院理学系研究科教授。2017年3月退官。

専門はエキゾチック原子。

スイスのCERN(欧州合同原子核研究機関)を拠点に、

反陽子ヘリウム原子と反水素原子の研究を行う一方、

2011年3月以来、福島第一原子力発電所事故に際し、

自身のTwitterから現状分析と情報発信を行う。

音楽を通して子どもたちを育てる、

公益社団法人才能教育研究会

「スズキ・メソード」会長。

糸井重里との共同著書に

『知ろうとすること。』(新潮文庫)。

現在はほぼ日のサイエンスフェローをつとめる。