古典を教えるほぼ日の学校で、
なぜ、いま橋本治なの?
と、不思議に思う方がいらっしゃるかもしれません。
それについては、この講座の予告コンテンツ
「いま、なぜ橋本治さんなのか?」でも触れましたので、
良かったら、そちらをお読みください。
ともかく、私はこの学校で橋本さんの講座を始めることが、
とても自然なことではないかと思っています。
橋本さんは古典と言わず、
あらゆることを勉強する際の、
気構えや身構え、つまりは覚悟について、
本当に親切に、丁寧に、身をもって示してくれた
“ありがたい先輩”でした。
ほぼ日の学校を開講する直前の、
「ごくごくのむ古典」というイベントに、
真っ先に講師として来ていただいたのも、
そういう思いがあったからです。
橋本さんは期待に応えて、
「古典ひろいぐい」という、
橋本さん以外ではあり得ない、
ユニークで愉快な話を、
独特の語り口で披露してくれました。
最初のシェイクスピア講座にも
快く登壇してくれました。
「ほぼ日の学校」のスタートを祝福してくれた
心強い味方のひとりです。
それ以前から、個人的には存じ上げていましたが、
大きな仕事を直接担当する機会はありませんでした。
膨大な量の著作は到底読み切れるはずもなく
「いい読者ではありません」と、
ご本人を前に、失礼ながら告白したこともありました。
それだけに、2019年1月の訃報に接してからは、
努めてその著作を読み返そうとしています。
すると、これまで気づかなかったスケールの大きさ、
目標の高さ、周辺領域への目配り、
人としての優しさ、自分に対する厳しさ、等々が、
より強く感じられてきます。
誰かと橋本さんのことを話せば話すほどに、
新たな魅力に目を開かれるともに、
いっそう「謎」が深まっていく思いを味わいます。
この講座を「橋本治をリシャッフルする」と題したのは、
「わかったつもり」の橋本治の仕事を、人を、
まっさらな目で、もう一度見直して見ることが、
いまの時代を生きる私たちにとって、
とても意味あることだと思えたからです。
素晴らしい講師の方々にご参加いただけることになりました。
その早すぎる死から一年。
“ありがたい先輩”の足跡を改めてたどり、
橋本治を橋本治流に読み解いていきたいと思います。
ほぼ日の学校長 河野通和