講師紹介村口和孝さん

学校長の推薦コメント

講師陣のなかで、シェイクスピアとの距離が
もっとも遠く見えるのが、ベンチャーキャピタリストの
村口さんかもしれません。しかしながら、
その世界でレジェンドになっている村口さんの
活躍の基盤にシェイクスピアがあるということを、
たまたま知る機会がありました。

村口さんとシェイクスピアがどこでどのように交わり、
それによって社会に新たな種がまかれたか、
そのドラマをみなさんと共有したいと思います。

講師のことば

シェイクスピアに出会ったのは、
自分が何者かわからない自己喪失期にあった
大学はじめのころでした。医学部に行きたくて2浪したあと、
力試しで受けた慶應義塾の経済学部に受かってしまって
進学はしたものの、経済はピンとこないし、
得意だった水泳も2年遅れでやりづらく、
友達に会うためだけに、彼が所属していた
シェイクスピア研究会に顔を出すようになった。

でも、シェイクスピアはよくわからなかった。

人殺しや血みどろの戦いや不倫など
複雑な人間関係が錯綜して、
それまでの自分の尺度ではわからないことばかりだった。

そんなとき、日生劇場であった
「NINAGAWAマクベス」を見たのです。

舞台は仏壇で、最初と最後に
祈るおばあさんが登場する、そんな演出です。

徳島の真言宗の家で育った私は
自分の体験に重ねて舞台を見ることができた。

経験したことのない没入感があって、
ひょっとしたら、シェイクスピアは
すごい作家かもしれないと気づき、
それからまじめに読み始めました。

シェイクスピアはすべてのこと、
宇宙を書いていることがわかった。

それから聖書、コーラン、法華経、論語など
あらゆる古典を読みました。

シェイクスピアを学んだあとは、
1年生のときに単位を落とした経済行動科学、
計量経済学などが理解できるようになった。

俄然おもしろくなった。

1600年頃に書かれたシェイクスピア作品でありながら、
経済学の父アダム・スミスが説く人間学と
同じであることがわかる瞬間があった。

それまで「いいこと」と「悪いこと」という
子供っぽく分類された世界で生きていたけれど、
「すべては人間の行動である」と
肯定する世界の存在に目覚めた。

根本的に違う景色が現れたのです。

いま私がやっているベンチャーキャピタリストという仕事は、
ゼロから何かを生み出す人を支える仕事ですが、
これはシェイクスピアの考えそのものです。

すべての登場人物が何でもないところから
不倫したり殺人者になったりする。

最初から善人や悪人がいるのではなく、
人は万華鏡のように何でもなり得る。

このダイナミックな人間観こそ
私がシェイクスピアから学んだ人間学であり、
いまの仕事のベースになっている考えです。

『ヴェニスの商人(原題:The Merchant of Venice)』
を題材に、そんなお話をしたいと考えています。

村口和孝むらぐちかずたか

実業家。慶應義塾大学大学院経営管理研究科講師。

1998年に立ち上げた個人型ベンチャーキャピタルの 日本テクノロジーベンチャーパートナーズ代表。

投資成功例としてDeNAが知られる。

慶應義塾大学経済学部卒業。

「ふるさと納税」制度の提唱者としても知られる。

著書に『私は、こんな人になら、金を出す』。

ベンチャーキャピタルについて学ぶために シリコンバレーを訪れたとき、 「ベンチャーキャピタリストになるために何が必要か」と 尋ねて、君は何をしてきたのかと逆に聞かれ、 「シェイクスピア劇を演出した」と答えると、 「シェイクスピアの演出という経験こそが、 ベンチャーキャピタリストになるために必要な素養である」と太鼓判を押された経験を持つ。

1958年生まれ。