講師紹介向井万起男さん

学校長の推薦コメント

専門である医学の話をするときは
いたってクールな向井さんが、
アメリカ大リーグ、海外ミステリー、宇宙と並んで
熱弁を振るうテーマがあります。

それがシェイクスピア。

その理由は向井さんのことばを読んでいただくとして、
今回、シェイクスピア講座で
向井さんは永年の封印を解きます。

いったい何が飛び出すのか、
見逃したらきっと後悔しますよ。

講師のことば

医学部演劇科卒業と言われるくらい
大学時代は演劇部の活動に没頭しました。

舞台監督を務めた一度をのぞけば、
あとはすべての公演で役者。

ずっとやりたいと思っていたのに、
やれなかったのがオセロです。

デズデモーナをやれる女優がいなかったから、
というのは冗談で、当時の私たちの実力では
『オセロ』を上演することは叶わず、
オセロはずっとあこがれの役のままでした。

初めてのシェイクスピアは、
中学生か高校生の時に買って読んだ
福田恆存訳のシェイクスピア全集です。

ものごころついたときから本を読むのが好きでしたが、
同時にテレビドラマや映画も大好き。

シナリオはなかなか手に入らないけれど
戯曲なら手に入る。チェーホフと前後して
シェイクスピアを読みはじめ、
一通り読んでそのすごさに感動。

以来、シェイクスピアの熱狂的ファンです。

リア王、マクベス、ハムレット‥‥傑作は数多くあれど、
ぶっちぎりでおもしろいのが『オセロ』で、
理屈抜きにもっとも魅力的なキャラクターが
オセロです。

『オセロ』には、ハムレットにおける
“To be or Not to be”のような、
いわゆる名セリフと言われるものがない。

そもそも文脈から抜き出したセリフに
意味はないと思いますし、あらゆる小説や映画やドラマ、
戯曲の言葉は現実離れしている。誰もあんな風に、
ひっかかることなく文法的に正しい文章や
壮大な言葉を日常生活で口にしたりはしないでしょう。

でもなぜ、戯曲が心を打つかといえば、
演劇がトータルとして描き出す世界が
イマジネーションを刺激して、
物語としておもしろく、かつ心に響くからなのです。

戯曲は自分で演じてみると、
読むのとはまたちがった魅力に気づきます。

受講するみなさんと一緒に『オセロ』を演じて、
シェイクスピアの魅力に迫りたいと思っています。

向井万起男むかいまきお

医師。慶應義塾大学病院病理診断部長などを歴任して 2013年定年退職。「世界一メジャーリーグに詳しい病医」として朝日新聞夕刊にコラムを連載中。

2009年、『謎の1セント硬貨 真実は細部に宿るin USA』 で第25回講談社エッセイ賞受賞。

著書に『君について行こう 女房は宇宙をめざした』 『女房が宇宙を飛んだ』『ハードボイルドに生きるのだ』 など。慶應義塾大学医学部在学中、演劇部に所属。

1947年生まれ。