講師紹介河合祥一郎さん

学校長の推薦コメント

まさにシェイクスピア研究の〝申し子〟。

オーソドックス、かつ気鋭の学者でありながら、
同時にお茶目で精力的。

自ら新作戯曲や文楽の脚本を手がけ、
芝居の演出もするなど、
アカデミズムの世界に留まることなく、
芝居をこよなく愛する現場の人です。

シェイクスピア講座の要としてご登場いただきます。

ため息がでるほど見事な
クイーンズイングリッシュもお楽しみに。

講師のことば

出会いはラジオ。「100万人の英語」というラジオ番組で、
映画「ロミオとジュリエット」の
サウンドトラックが流れたのです。

主演のオリビア・ハッセーが「O, Romeo」とささやく。

なんとロマンティックなものがあるのかと思ったのが、
初めて原語で耳にしたシェイクスピアでした。

でも、その前にもうひとつ
忘れ難いエピソードがあります。

中学時代から英語が好きで、
父親の本棚から名探偵ポワロシリーズなど
取り出して片っ端から読んでいた。

そのなかの一冊がシェイクスピアの
『As You Like It(お気に召すまま)』だった。

高校生のとき、教室で読んでいると友だちに、
「何読んでんだよー。どうせエロ本だろー」と言われて、
「違うよ」とタイトルを示したところ、
「やっぱりエロ本じゃないか」と言われたのが
印象に残っています(笑)。

大学に入ってからは、
演出家・鈴木忠志さんの稽古場通訳が忙しくて
ほとんど大学に行かず、成績がよくないので、
当時「底なし」といわれた英文科に進んで、
安易にシェイクスピアを選びました。

でも、勉強しはじめるとおもしろくなって、
ケンブリッジ大学大学院に留学して
シェイクスピアのみならずエリザベス朝の戯曲を
読み尽くすくらい毎日読んで勉強し、今に至っています。

シェイクスピアが教えてくれるのは
「生き方」そのもの。

演劇の何がすごいかというと、
そこにないものを「ある」と想定して、
あらしめる芸術であること。

生きるとは、いまこの瞬間には「ない」未来を
作っていくこと。現実だけを見ていては
本当に生きたことにならない。

変えるのは君であり想像力だ、
そうありたいと強く念じる力さえあれば
未来は変わるという信念。

人間の精神力の強さこそが世界を切り開いていく。

それをシェイクスピアは教えてくれるのです。

河合祥一郎かわいしょういちろう

英文学者。東京大学大学院総合文化研究科教授。

専門はシェイクスピア。東京大学大学院博士課程修了。

英ケンブリッジ大学と東京大学より博士号取得。

博士論文は『ハムレットは太っていた!』と題して 刊行されている(2001年サントリー学芸賞受賞)。

シェイクスピア研究の第一人者で、 シェイクスピア全作品上演を目標に掲げる 彩の国シェイクスピア・シリーズの企画委員長も務める。

主な著書に『謎解きシェイクスピア』 『あらすじで読むシェイクスピア全作品』 『シェイクスピア 人生劇場の達人』など、 訳書に『ピーター・ブルック回想録』 『シェイクスピアの驚異の成功物語』などがある。

角川文庫でシェイクスピア戯曲の新訳を刊行中。

1960年生まれ。