講師紹介
奥本大三郎さん

学校長の推薦コメント

1981年の『虫の宇宙誌』という
(〝虫屋〟としての)デビュー作を読んで、
「おもしろい仏文学者がいる」
と思ったのが最初の出会いです。

私自身は昆虫にまったく興味がありませんが、
何につけ「偏愛をもって何かを語る人」は
大好きなので、
そこからつきあいが始まりました。その後、
奥本さんは『ファーブル昆虫記』という
大作の新訳をなし遂げます。

昆虫道もさらに究め、
ついには元の自宅を改造して
「ファーブル昆虫館
『虫の詩人の館』」をつくり、
地下にはファーブルの生家の一室まで
再現してしまいます。

そうした知識と情熱を活かして、
ファーブルとダーウィンが
本当はどういう関係であったのか等々、
専門家との鼎談の場を賑やかに
盛り上げてほしいと願っています。

講師のことば

虫の色と形はその土地の風土を現している。

朝から晩まで、日本や外国の虫を見ていて、
そんなことを思うようになりました。

鳥にも同じようなことがいえます。

たとえば誘拐されて目隠しをされ、
飛行機でどこかに連れて行かれたとしても、
そこにいる虫を見れば、自分がどこにいるのか
だいたいの見当はつく。

たとえば、南米の蝶アグリアスと
ベニコンゴウインコは、赤・藍・黒という
同じ鮮やかな色の組み合わせです。

アフリカのオカピと
ゴライアスオオツノハナムグリも、
茶色と縞模様の組み合わせがそっくりです。

風土と、そこに生息する生き物は調和している。

そして、それが文化や文学にも影響している。

講義では、実例をあげながら、
そんなお話をしようと思います。

こんなことは学者には言えません。

例外だらけだから。

私は素人だから、
楽しみながら、こんな話をすることができます。

「なぜそうなのか?」と聞かれても、
「アーメン」としか答えられませんけれど(笑)。

それに対して、専門家である
長谷川眞理子さんや岡ノ谷一夫さんが
どんな反応を示されるのか、
とても楽しみです。

ダーウィンとファーブルは個人的に仲がよくて、
ダーウィンがファーブルに
「昆虫について、こんな実験をしてみたら
どうですか?」という提案の手紙を送ったり、
ファーブルがその通りに実験をしてみたという
記録も残っています。

そんなお話もしたいと思っています。

奥本大三郎おくもとだいさぶろう

ボードレール、ランボー等、19世紀フランス詩を専門とするフランス文学者。並行して、幼少期より昆虫採集に親しみ、昆虫関係の著書・訳書も多い。NPO日本アンリ・ファーブル会理事長。東京大学文学部仏文科卒業。同大学院修了。主な著書に『博物学の巨人 アンリ・ファーブル』『虫の宇宙誌』『楽しき熱帯』『虫のゐどころ』『パリの詐欺師たち』『本と虫は家の邪魔』『虫から始まる文明論』など。『完訳ファーブル昆虫記』(全10巻、20冊)を2017年に完成。虫好きの養老孟司氏、池田清彦氏との共著『三人寄れば虫の知恵』もある。1944年大阪生まれ。埼玉大学名誉教授。元の自宅を、昆虫の標本やファーブルの資料を展示する「虫の詩人の館(ファーブル昆虫館)」として公開している。