ダーウィンと進化論。
マルクスと『資本論』。
どちらもよく知られた組合せです。
常識の一部のようになっていて、
誰もがわかったふうに話します。
どこまで本当にわかっているのか?
それは大いに疑問です。
ダーウィンと進化論。
私も“丸暗記”しただけで終わっていました。
それじゃあんまりだ、と思ったある時、
『種の起源』を手に取ってはみたものの、
訳文の難渋さに閉口し、あっさり挫折してしまいます。
以来、何度かダーウィンの名前を意識することは
ありましたが、ダーウィンの偉大さがどこにあるのか、
あやふやな状態で、うかうか今日まで過ごしてきました。
ダーウィンの考え方を「弱肉強食の論理」だと
誤解した俗説が出まわったり、
ナチス・ドイツの優生思想と一緒にして、
人種差別の根拠のように思う人たちもたくさんいます。
DNAを「読む」ことで、私たちがどういう進化の道筋を経て、
いま現在に至ったのか、かなり正確に
知ることができるようになりました。
一方、「生命の設計図」であるDNAを「書き換える」
ゲノム編集ばかりでなく、DNAを設計して「合成する」
新たな動きがすでに始まっているようです。
連綿と続いてきた長い生きものの進化の歴史と、
科学技術文明の交差する地点に立って、
いま一度、人間本来のあり方を考える
ヒントを一緒に探したいと思います。
われわれはどこから来て、どこへ行くのか――と。
ほぼ日の学校長 河野通和