講師紹介
最相葉月さん

学校長の推薦コメント

1998年刊行の『絶対音感』が
大きな話題となって以来、
『星新一 一〇〇一話をつくった人』(2007年)など、
最相さんは着実で丁寧な仕事を重ねてこられました。

最近は、科学分野に意欲的に取り組んで、
サイエンスライターとして
紹介されることも増えました。

実際、サイエンスの領域をわかりやすく伝える
貴重な書き手といえるでしょう。

私が季刊誌『考える人』の編集長だった時も、
生物のデザインや構造、生態システムを
産業や環境づくりなどに応用する
「バイオミミクリー」について、
とてもおもしろいレポートを書いていただきました。

最相さんの嗅覚というか、
時代の少し先を捉える鋭敏なアンテナには、
いつも驚かされます。

今回、産婦人科医の増﨑英明さんとの共著
『胎児のはなし』のことを知り、
ぜひ講師として来ていただこうと思いました。

講師のことば

かつて胎児の姿を見ることができたのは、
早産や死産などで、
不幸にして生を受けることのできなかった
ケースが大半でした。

ところがいまは、3Dの超音波によって、
私たちは歴史上初めて、母親のお腹のなかで
動いている胎児を生きたまま
見ることができるようになりました。

そうして見る胎児は、
笑っていたり、泣いていたり、
くちびるをなめるような仕草をしたり、
まるで感情がすでにあるのではないかと
思うほど、豊かな表情をみせてくれます。

表情は進化の過程で獲得したもので、
文化的要因にかかわらず
人類共通のものであるという
ダーウィンの説を裏付けるようです。

私は、40年あまり産婦人科医をなさってきた
増﨑英明先生に、
胎児の不思議な世界について
たっぷり聞かせていただき、
『胎児のはなし』という本をまとめました。

出生前診断や不妊治療のことなど、
難しい問題もたくさんありますが、
最新の医学でわかってきた
胎児に関する新たな発見について
お話をうかがえばうかがうほど、
生命の神秘に魅せられることばかりです。

そんなワクワクを講義で
わかちあえたら幸いです。

最相葉月さいしょうはづき

ノンフィクションライター。近年は科学技術と人間の関係、精神医療、カウンセリングなどを取材。『絶対音感』『青いバラ』『星新一 一〇〇一話をつくった人』『セラピスト』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『れるられる』『理系という生き方 東工大講義』など著書多数。1963年生まれ。神戸市出身。