講師紹介
長谷川眞理子さん

学校長の推薦コメント

長谷川さんは、和歌山県の
紀伊田辺で幼時を過ごしました。

博物学者・南方熊楠の世界です。

家は海に近く、裏には川も山もある
豊かな自然の中で育ったそうです。

四季折々の草花や昆虫、
海辺の生きものに触れた思い出を書いた
エッセイを読んだとき、
レイチェル・カーソンの
『センス・オブ・ワンダー』に登場する
少女の姿を思い浮かべました。

図鑑を夢中で読んだそうです。

たいへんな本好きだということも知っています。

新しい世界の発見に目を輝かせていた少女が、
長じて進化生物学者になった。

その人と一緒に、
いまダーウィンについて学ぶと思っただけで、
もうワクワクしてきませんか?

講師のことば

チャールズ・ダーウィンという人には、
何本もの軸ですごく感動しました。

いろいろなことを考えさせてくれました。

ダーウィンは、生命現象を俯瞰して
統一的に説明することを考えました。

生命の起源からいろいろなものが分岐して
分かれてきたというのが進化ですが、
それをきちんと説明しようとすると、
古生物学、地質学、生態学、行動学、生理学、
内分泌、生物の地理的分布……など、
あらゆる分野を網羅的に知った上で
整合性のあるシナリオを書かなければならない。

それを1850年代にやったのは、すごいこと。

現在ある生態学、行動学、人類学、心理学など、
生命をめぐる学問の原点をたどっていくと、
すべてどこかでダーウィンのアイディアにたどり着きます。

生物の進化を考えようと決めた時点で、
ダーウィンはものすごく高い次元に登って
全体を見ざるを得なくなり、
一生をかけて果敢にそれに取り組んだ。

そのパースペクティブの広さと、
社会常識を飛び越える勇気と精神にも感銘を受けます。

これから先、AIをはじめとする新しい技術は、
人間と人間社会に根本的な変化をもたらすでしょう。

それがどんな変化かはわからない。

短期的に見れば、新技術は良いことをたくさんもたらします。

けれど、それが広がって何年かたったとき、
責任とか自由とか、あきらめとか、
さまざまな概念がいまとは違うものになっている
可能性があると思うのです。

人間は目先の損得に目を奪われ、
限られた範囲の将来予測に左右されがちですが、
人類学や進化生物学は
それを超える視点をもたらしてくれます。

ダーウィンが私たちに遺してくれたものを学ぶことは、
必ずや私たちの世界を広げてくれるはずです。

長谷川眞理子はせがわまりこ

人類学者。総合研究大学院大学学長。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科博士課程修了。専門は自然人類学、行動生態学。イェール大学人類学部客員准教授、早稲田大学教授などを経て現職。『世界は美しくて不思議に満ちているー「共感」から考えるヒトの進化』『ダーウィン「種の起源」』(100分de名著)『生き物をめぐる4つの「なぜ」』『動物の生存戦略』『進化とはなんだろうか』『科学の目 科学のこころ』など著書多数。訳書に『ダーウィン著作集〈1〉人間の進化と性淘汰(1)』『人間の由来(上下)』などがある。矢原徹一さんとの共著に『ダーウィン著作集〈別巻1〉現代によみがえるダーウィン』がある。1952年、東京生まれ。