講師紹介
渡辺政隆さん

学校長の推薦コメント

渡辺さんに初めて会ったのは
1980年代の終わりごろ。

アメリカの古生物学者スティーブン・
ジェイ・グールドが来日した時のことでした。

以来、渡辺さんのお仕事には
ずっと注目していましたが、
近年、快哉を叫んだのは
ダーウィンの『種の起源』を
「わかりやすく」新訳してくださった時でした。

学生時代、この名著に挑んで
挫折した経験があるだけに、
渡辺訳が出るとすぐに買いに走りました。

ただ、それに安心して
ずっと「積ん読」のままでした。

今回の講座をきっかけに
初めて読み通したわけですが、
この本のおもしろさ、
ダーウィンという人のすごさを、
改めて渡辺さんとともに読み解き、
みなさんと共有したいと思います。

講師のことば

ダーウィンの『種の起源』は世界を変えた一冊です。

この本の何がすごいのか。

どうして一冊の本が世界を変えることになったのか。

そんなことをお話したいと思います。

そのなかで、ダーウィンの偉大さ、しつこさ、
先見の明についてもお話することになると思います。

歴史上たった1回ずつしか起こらなかった
進化が相手であるだけに、
再現実験ができるわけではないため、
ダーウィンは世界各地のいろいろな情報源から
証拠を集めてきました。

そして様々な分野について
新たに研究対象をひろげていくことになり、
それが後世の発展につながりました。

「ダーウィンでなくとも、いずれ
誰かが似たような進化理論に気づいただろう」
という言い方がありますが、
一人で成し遂げたダーウィンのような人は
他に出なかったのではないかと私は思います。

ダーウィンは「時代が生んだ人」
という側面はあるけれど、
やはり一人で20年もこだわって
書き続けたのは偉業です。

進化の原理を究めて、どうすれば
説得力をもって説明できるかを考えつづけた。

その意味で執念深い人ですが、
ダーウィンは心の広い人でもありました。

そんなダーウィンの人となりについても
お話します。

2回目の「進化論の楽しみ方」の時間には、
進化論が我々の生活や文化に
どう浸透していったかを考えます。

優生学のように
悪用されてしまった分野もありますが、
そうしたことよりもむしろ、
アーティストや文学者が
進化論を作品のなかに取り込んだ事例や、
社会現象として、カルチャーのなかに
進化の解釈が読めるような
楽しい例をあげながら、
進化論の楽しみ方を
いっしょに考えていけたらと思います。

渡辺政隆わたなべまさたか

サイエンスライター、サイエンスコミュニケーター。2019年3月まで筑波大学教授。専門は進化生物学、科学史。主な著書に『DNAの謎に挑む』『一粒の柿の種』『ダーウィンの夢』『ダーウィンの遺産』。『種の起源』『「進化」大全』『シマウマの縞 蝶の模様』『地球46億年全史』『ワンダフル・ライフ』など訳書多数。