[後編]メロディが生まれるとき
体を動かすと脳が活性化する?
曲づくりに案外役立つのが、
いろんな音がする雑踏。
そんな創作の裏話を聞かせていただきました。
- どういう状況のときに浮かぶんですか、鼻歌は。
- ぼくは圧倒的に歩いてるときとか、
電車に乗ってるときが多いですね。
うーん、やっぱり
「音楽が生まれる秘密」なんてありませんね。
- 曲は誰でも作れるのでは?
と言われていますよね。
ネットを見ると、
「誰でも作曲はできます」
みたいなことが書いてあって、
まずCとAmとかコードを並べて、
それに何か好きなメロディのせて
「ほら、できあがり」とかね。
実際、曲を作るのって、
難しいことじゃないんじゃないですか。
- でも、それこそ
「どこかで聴いたメロディ」ですよね。
そうではなくてオリジナルなもの、
たとえば学校テーマ曲のはじまりは
どうやってできたんですか?
- つるっと出てくるんですよ。
たとえばそこにある棚にはどんな音が似合うかな、とか、
このコップにはどんな音が似合うかなーとか、
ぼくは、普段から
そういうことを考えるのが好きでして‥‥。
そういう感じで、自分の中で
「古典だったらこうかな」
「学校だったらこうだろう」
という関連づけで、できた曲かもしれません。
ただ、それは言語化された
理論的なものじゃなくて、
自分勝手なものです。
他の人から見たら、
「全然違う」って言われるかもしれません。
- 日頃から、
そんなことやっていらっしゃるんですね。
- やっているというより、
自然にそういう風にしちゃうことが多いです。
- 頭の中には常にいろんな音が流れてるんですか?
- いや、そんな大げさなもんじゃなくて、
歩きながら鼻歌うたようなもんです(笑)。
そんなもんだと思っていただければ。
- 雑踏とか、わりといいんですよ。
まわりから音楽が何となく聞こえてくるのが、
頭の中で勝手に変換されたりするんで、
いい具合に曲を思いついちゃうことがあります。
きっかけがあれば、あとはその人なりの方法で
どんどん曲を作っていくというのはありますね。
- ああ、それあるね。
- だから家で作るよりも、
どっかで何か聞こえてきた方が
浮かびやすいってことはありますね。
- 歩いてたり、体動かしている方が
脳が活性化する感じはありますね。
- きっかけのフレーズが浮かんだら
メモしたりするんですか?
- あんまりしないですね。
忘れちゃうようなやつは大したことないんですよ。
- ぼくはかなりメモか、
ICレコーダーで記録しますね。
iPhoneのボイスメモをよく使います。
忘れっぽいし、メモしとかないと不安な方なので、
小さな五線紙を‥‥。
- これ、なかなか見た目もいいよ。
- 最近ねぇ、ちっちゃい五線紙が売ってまして。
見せるほどのもんじゃないですけど。
- あ、メロディが書いてある。
- 家でメモ見て音を出して捨てるんですが、
何か残っているかな?
あ、あった。
「火星 さやか」‥‥。
- 「火星さやか」?
- ついこの間まで作ってたお芝居です。
正しいタイトルは「火星の二人」
(主演:竹中直人、生瀬勝久)。
(メモをみて)ああ最初、
キーはDだったんだなぁ。
曲作りの話に戻ると、
「いま、これを作る」となると、
頭の中がそのことばっかりになって、
支配されるんです。
そういう状態になっていると、
歩いているときとかに、ふと、
「これがヒントになるのかな」
というフレーズがでてくるんです。
- モチーフになるものがでてくれば、
あとはなんとかなりますね。
- 曲の最初から最後まで
ぜんぶ同時に出てくるタイプの人も
いるようですが、
関島さんなんかそっちですよね。
- そうですね。
うーん、時によりますね。
- ぼくはCMを多くやっていたせいか、
瞬間に〝つかむ〟ということを
要求されることが多かったので、
その「つかむ」部分さえでてくれば、
あとは落ち着いて、じっくり
その先を考えるようなことが多いですね。
発展のさせ方には
技術が必要なんだと思いますが、
うまくいったり、いかなかったりしています(笑)。
- ぼくの場合、たとえば「羊どろぼう。」
(注・糸井の著書『羊どろぼう』のために、
オリジナル曲を作っていただきました)だと、
まずギターのアルペジオ
(注・和音を順番に弾く奏法)をまず入れて、
繰り返し聞きながら、
その場で頭に浮かんだメロディを録音して、
それを聴きながら清書して、楽器を吹き直して、
次の楽器は何いれようかなという感じで、
ほぼ何も浮かんでいない状態から
ひとつひとつ丁寧に考えて加えて‥‥、
という風にやって、最終的な構成や裏メロディは
才能ある人々(栗原さんと関島さん)に任せて
という感じでしたね。
- 栗コーダーの場合、
3人それぞれ作り方も作風も違うので、
やっていて自分たちもおもしろいし、
聴いている人にとっても
幅が広くみえるんじゃないかなと思います。
「羊どろぼう。」のときは、
当時4人だったので、それぞれ案をだして
糸井さんに選んでもらったんですけど、
みんなぜんぜん違ったんで、びっくりしましたね。
- 違ったね。
- びっくりしたね。
- 意見があわないってこと、あるんですか?
- あわないですよ(笑)。
でもそれをすりあわせて、中間をとることによって
バランスをとるところがあります。
みんなの意見をあわせることによって、
バンドの曲になっていくんでしょうね。
- 長くやっているとお互いわかっているので、
きっとこんな風にやってくれるだろうから、
あとは任せる、ってこともあります。
自分だけで考えると幅が狭くなるので、
任せちゃった方がおもしろくなります。
- なるほど。
貴重なお話の数々、ありがとうございました。
こうしてオンライン授業と一緒になってみて、
曲の仕上がりはいかがですか?
- いい感じですね。
久しぶりに聴いたら
抜けがよくて良かったです。
- いいですね。
映像とあわさって、
やっと完成した感じがします。
- ほんと、そうですね。
つくってるときはわからないんですよ。
もちろんベストは尽くすので、
「ここで完成した」っていう
ポイントはあるんですけど、
本当に良いかどうかはまだわからない。
いま、時間をおいて客観視できて、
改めて良かったと思います。
安心しました。
- いい曲を作っていただき、
本当にありがとうございました。
(終わり)
2018-06-16-SAT